maekawa   kazuhiro

   前川 一洋 さん

広報時代に自身がリニューアルを担当した

コーポレートロゴの前で

 

 ◊♦ Profile ♦◊ 

〇 北海道羽幌町出身
〇 北海道立羽幌高等学校卒業
〇 1982年 弘前大学人文学部経済学科卒業

 

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1982年に卒業後、北海道拓殖銀行(現北洋銀行)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に勤務。銀行17年、NEDO等の公的研究機関で24年勤務。

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-これまでの勤務先の概要と、主な仕事内容を教えてください。

 

銀行では融資・営業を担当。東京、名古屋、札幌、帯広で勤務。所謂バブル期を挟みその前後を銀行で経験しました。銀行での17年間は転勤のため6回引っ越ししました。

NEDOには当初銀行から出向し、出向後の2年後(40歳時)にプロパー職員として採用され転籍しました。NEDOは我が国で最大規模の研究開発資金のファンディング機関ですが、出向時は出資先の法人の財務等の経営管理を担当し、銀行の経験が生かすことができました。その後、国のプロジェクトの企画立案・運営、ベンチャー支援、TLO支援、広報、人事、出資・融資、債権管理、内部統制・リスク管理等の業務を担当しました。

特に、新設部署である広報部、リスク管理統括部で初代部長を担当したことや、人事課長として新卒採用やキャリア採用を担当したのが印象に残っています。新卒採用は最も楽しい仕事でした。担当した3年間で50名前後採用しましたが、採用した職員のその後の成長を見るのが楽しいです。既に管理職になっている職員もおり、組織の中核的な人材に育っています。

また、現在はNEDOと同じファンディング機関であるAMEDに出向しています。はじめの1年半は人事課で採用を担当し、昨年4月に監査室に異動し現在に至っています。

 

 

「なぜ私が人事課長に?」その後の軸となった上司の言葉

 

-就職してから採用担当になるまでの経緯や理由を教えてください。

 

人事課長の直前の部署で、ポスドクのキャリアチェンジを支援するNEDO産業技術フェローシップ事業(URAの先駆けとなった事業)という人材育成事業を担当したことが影響しているかもしれません。従来、人事課長は所管省庁の出向者やプロパー職員のポストでしたが、中途採用者で人事課長になったのは私が初めてでした。当時、内示を受けた際、「なぜ私なのでしょうか?」と役員に質問したところ、「しがらみがなく、新鮮な目で人事ができる」と言われました。このことは、その後の職員の人事異動を考える際にも中心的な考え方になったと思います。つまり、その職員のイメージや評判・噂等を鵜呑みにするのではなく、極力、実際に自分で見たり、話したりしてその職員の人柄や能力・適性を判断するよう心掛けました。

人事課長として新卒採用を3年間担当しました。それまでNEDOは民間企業のような採用活動をしていませんでしたが、就職セミナーへの参加や全国各地の大学での就職説明会にも参加し、多くの学生にNEDOを知ってもらう努力をしました。従来、新卒採用は数名程度でしたが、応募者も増加し新卒者を10名以上コンスタントに採用をするようになりました。

 

 

自分の置かれた場所で、一生懸命努力する

 

-仕事をしていく上で、心掛けていることはありますか。

 

職人や芸術家等の特殊な場合は例外として、人間は一生同じ仕事をするわけではありません。大きな組織に入ると数年毎に異動・転勤があります。その場合、希望した業務や経験した業務でないことがほとんどですが、その際心掛けているのは、担当する業務に関する専門知識を身につけようと努力することです。半年後そして1年後には「この仕事に関しては自分が一番良く知っていますよ」と言えるぐらいのレベルに到達することを心掛けています。
仏教の臨済宗の開祖の言葉に「随所作主 立処皆真」(随所に主となれば立つところ皆真なり)というのがあります。この意味は「自分の置かれた場所で一生懸命努力すれば、そこがあなたを生かす場所です」というもので、別の言い方をすると「花は咲く場所を選べず、種が落ちた場所で精一杯成長し立派な花を咲かせようとする」ということです。異動時の挨拶やゼネラリストを目指す人によくこの話しをします。
また、適材適所という言葉があります。おそらく人事を担当した経験者は誰もが感じることですが「適材はどこの場所でも適材」が定説であり、私自身もそのようにありたいと常々思っています。
もう一点、これは難しいことですが、物事を複眼的に見る、考えるということです。
仕事では立場が高くなるにつれ、何かを決定する場面や結論を促す場面に日々遭遇します。その時に一呼吸置いて意識的に別の立ち位置から物事を見るよう心掛けています。特に管理職にとって複眼的に物事を分析・判断する能力は必須だと考えますが、若手の頃から意識しておくことをおすすめします。数学の世界では答えは一つですが、世の中一般はそうではありません。正しいか正しくないかに加え、合理的か、最適かという視点で結論を導き出すことが必要になります。

 

-仕事をしている中で、楽しさややりがいを感じるのは、どんな時ですか。

 

銀行もファンディング機関も会社の事業や研究開発に資金を供給するといったことに違いはありません。その結果、会社の事業が大きく成長したときや、研究開発が成功し実用化にこぎ着けたときに一番喜びを感じます。特にベンチャー等の経営者から「苦しい時にNEDOが支援してくれたので実用化に繋がった」、「NEDOの支援がその後VCからの出資の呼び水になり成長に繋がった」とのお言葉をいただく機会がありますが、その時にこそNEDOの一員で良かったと強く感じます。NEDO職員はこのような感覚を皆共有していると思います。NEDOは、ここ20年間にベンチャー・スタートアップ2,000社を支援、そのうちIPOを果たしたのは40社、その時価総額は1兆1千億円超となっていますが、メディア等でNEDOが支援したベンチャーが紹介されるとうれしくなりますね。以前のことになりますが、支援したベンチャーが東証に上場し、上司とともに上場当日のセレモニーに招待され鐘を打つ機会に恵まれました。

 

科学ジャーナリスト会議(韓国・ソウル)出展ブースにて

セラピーロボットを抱いた前川さん

 

-仕事における今後の抱負(やりたいこと)や、将来の展望を教えてください。

 

現在、64歳になります。今後どのくらい働けるか分かりませんが、ここ5年、担当業務とは別に財務諸表の見方や分析についての研修を実施しています。NEDO、AMEDとも所謂理系の人材が多いのですが、ファンディング機関での公募・採択において採択先の財務状況の安全性評価は避けて通れないので、職員向けに特化した研修テキストを作成し研修を実施しており、とても良い反応をいただいております。財務分析というと難しそうで食わず嫌いの人が多いと思いますが、そのようなアレルギーを払拭するような内容にしています。今は兼業になるので出来ませんが、リタイア後は財務系Youtuberを目指そうと考えています。

 

-弘前大学を志望した理由は何ですか。

 

昔、国立大学の受験には一期校、二期校という制度があり、私の場合、ちょうどその最後の年だったと記憶しています。一期校は地元の国立大学を受験しましたが、少し言い訳になりますが当日風邪で熱っぽく体調が優れず合格に至りませんでした。二期校として弘大を選んだのは、3歳上の親類が弘大にいましたので親近感があったことです。浪人して再度翌年受験することも考えましたが、入試制度が変わるのと、短期集中型の自分に浪人生活は向いていないと感じたので躊躇せず弘大を選びました。なにせ、高校時代は3年生の夏頃まで大学受験のことは考えず、趣味の音楽に没頭していました。夏休み以降、急に目覚めて人が変わったように勉強しました。大学受験のための勉強は実質半年ぐらいしかやっていないと思いますが、今振り返れば集中力があったのだろうと思います。入学してまもなく下宿の先輩方から誘われて弘前公園の桜の下でお花見をしましたが、弘前に来て良かったと実感しました。

 

春の弘前公園の様子

 

弘大で培った「学ぶ楽しさ」がその後の基盤に

 

-学生時代に印象に残っていることや、力になったことがあったら教えてください。

 

3年になってから地主豊先生の財政学ゼミに入りました。地主ゼミは人気があり競争率が高かったと記憶しています。財政学の内容はマクロ経済学が中心であり、偏微分などの数学を使うことが新鮮で数学が得意になりました。本当に3~4年生の時には勉強に打ち込みました。これまでの人生であの時が最も勉強した時期だったと言えますが、専門課程に入ってからの履修科目の成績は全て優の評価だと記憶しています。振り返れば、この時の学ぶ楽しさの経験がそれ以降の自分の基盤を作ったと言えるかもしれません。当時の書籍は捨てずにまだ持っています。

 

-学生時代に現在の仕事に繋がるような活動をしましたか。また、特に青森県外での就職を希望する場合、学生時代にやっておいた方が良いことはありますか。

 

特に、学生時代にその後の仕事に繋がるような活動を意識したことはありません。一つアドバイスすると、語学は最低1つやっておいた方が良いです、特に話すスキルです。英語でも良いし、他言語でも良い。文系・理系問わず、語学は必ず役に立ちますし、仕事の幅を広げることができます。特に首都圏にある企業は日本国内だけでなくグローバルで活動していますので、採用時のみならず入社してからもアピールポイントになると考えます。

 

-就職に関する情報の入手や、インターンシップの活用は、どのようにしたらよいでしょうか。

 

採用する側の企業等は、精一杯着飾って自社の魅力を学生にアピールします。昨今就職関係の情報は充実していますが、最も有効なのは就職したい会社の社員(入社5年目前後)から話しを聞く、それが難しいなら同業他社の社員でも良いと思います。就職説明会の場でも良いし、インターンシップならなおさら良いと思います。

 

-弘前大学のような地方大学生が、青森県外での就職活動でアピールすべき点はありますか。

 

ショックを受けるかもしれませんが、首都圏で「ヒロダイ」というと一般的には「広島大学」のことを指すことが多いです。一方、採用経験者として地方国立大学の学生に対する印象としては、万遍なく仕事ができるという印象を持っています。平均点が高いということでしょうか。NEDOでも地方国立大出身者がいますが同じ印象を受けます。過去の卒業生インタビューで「地頭力が強い」と言われていた方がおられましたがこれに通ずることかもしれません。
これは全くの想像ですが、入試の際の科目の影響があるかもしれません。文系・理系問わず私大などと比較しても、国立大学は入試科目が多いので、その分、受験勉強の分野の幅が広いことが良い影響をもたらしていると感じます。また、地方大学の方が落ち着いて勉学や研究に打ち込める環境が整っていると感じています。

 

「採用する側」として、重視していること

 

-就職先を考える在学生にアドバイスをお願いします。

 

よく新卒採用の時に学生のどこを見るかということを聞かれますが、まずは学業成績を重視します。学生によっては、スポーツやアルバイトや社会貢献等様々なアピールポイントはありますが、多くの学生が親に学費を出してもらって大学に在籍していると思います。ですから、まずはきちんと勉強していること、学業成績を上げていることを最重要視します。また、人物評価は極めてシンプルです。「明るく、素直、へこたれず」と言う三点を重視しました。学生に多くのことを求めてもいけませんし、人の能力は採用時点でさほど差があるとは思いません。要は入社後にどれだけ伸びる素地を持った人間なのかを見定めることが重要です。素直な感性と吸収力、マイナス思考にならず、人を信じることができる、人から好かれるといったことが成長を促す要素であると考え、これは前述した「適材はどこの場所でも適材」に繋がると考えています。実体験として、この要素が優れた人材は採用後に成長しています。

 

在学生の皆さんへ

 

学生時代は一度きりしかありません。社会に出ると腰を据えて勉学に時間を割くことができなくなります。ぜひとも学生時代は学業を疎かにしないでください。大学で学んだことが直接実社会で役立つとは限りませんが、ロジカルに考える能力や問題を解決する能力、何よりも脳のスタミナを養うことに繋がります。

 

 

興味のある方は、ぜひ国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のHPをご覧ください。

 

https://www.nedo.go.jp/recruit/

 

(2024年1月取材)

 

 

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