taki  shota
    滝 将太
さん

 

 

 ◊♦ Profile ♦◊ 

・愛知県名古屋市出身、名古屋大学教育学部附属高等学校卒業
・2009年 弘前大学理工学部電子情報システム工学科卒業
・2009年9月から1年間、ボルドー第三大学(フランス)へ留学
・2012年 弘前大学大学院理工学研究科修了
・株式会社トーメンエレクトロニクスに入社。株式会社ネクスティエレクトロニクス、住友電気工業株式会社に勤務後、株式会社NTTドコモに入社。

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学生時代は加藤博雄先生のゼミで半導体について研究。バレーボール・スキー・バドミントンの各サークルに所属していた。就職後は、車両のエレクトロニクス化に伴うECU(自動車制御装置)向けの次世代製品提案やマーケティング活動を経て、現在は次世代交通に関する業務を担当している。

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仕事で大事なのは “温度感” が伝わるコミュニケーション

 

-勤務先の概要と、ご自身の現在の主な仕事内容を教えてください。

主な業務は、自動運転等の次世代交通への取り組みの企画、それに準ずる関連省庁や自治体との予算化提案、企画立案です。

 

-この職業を目指したのは、なぜですか。

今の仕事は、ITS・道路システムをはじめとする次世代社会インフラの企画・提案・実証を担当する仕事です。自動運転時代へのモバイル提案という新領域へチャレンジでき、ドコモ全体を巻き込んだ業務推進を行う非常にやりがいのあるポジションで、自分の力が活かせると思ったからです。

 

-仕事をしていく上で、心掛けていることはありますか。また、楽しさややりがいを感じるのは、どんな時ですか。

人とのコミュニケーションを積極的にとるように心掛けています。コロナ禍かつ中途入社ということもあり、一緒に働く方をよく知るために、また自分自身を知ってもらうために、メールだけではなく電話やWeb会議などで人としての“温度感”が伝わるようにしています。

また自分自身で企画提案を行ったり、多くの関係者を巻き込んでプロジェクトを進めていく必要がありますが、しっかりと意思疎通ができたり、プロジェクトが円滑に進み周りから感謝されたりした際に楽しさややりがいを感じております。

 

-コロナ禍で働き方はどのように変わりましたか。

2020年3月頃からはテレワークが中心になりました。NTTでは会社全体で出社率30%を目標として掲げていますが、ショップ等出勤しなければならない部署もあるため、本社勤務などの社員は、可能な限り在宅勤務を行っています。

 

-仕事における今後の抱負(やりたいこと)や、将来の展望を教えてください。

将来的には海外駐在も視野に入れた海外顧客向けの提案を行ったり、マネージメントにも興味を持って日々業務に臨んでいます。具体的にどうしてもやりたいということをまだ見つけていませんが、個人的には「道中道半ば」だと思っています。

 

 

学生時代のフランス留学を通して無くなった “物怖じ” と “偏見”

 

-弘前大学を志望した理由は何ですか。

愛知県出身のため、ひとりで自立した生活が送れるように、あえて実家から距離が離れている弘前大学を志望しました。また、父親も雪国かつ地方(と言えば聞こえはいいですが実際は田舎)で大学生活を送っていたこともあり、その勧めもあって受験を決意しました。

 

-学生時代に印象に残っていることや、力になったことがあったら教えてください。

サークル活動やゼミでの研究はもちろんですが、フランス留学時代がいちばん印象的でした。留学先は、フランス語以外通じない土地。第2外国語でフランス語を履修していましたが、ほぼゼロの状態でした。知らない環境に身を置くのは、よく言えば「勇敢」、悪く言えば「無謀」。弘前大学からの交換留学生は私ひとりだったため、言葉も全くわからず、文化も全く異なる地域での生活に、とても心細い思いをしました。しかし、結果的には1年を通して現地での友人も多くでき、言葉もひと通り話せるようになり、非常に充実した1年間を過ごすことができました。留学経験を通して自分が変わったな、と感じるのは、物怖じしなくなったこと、人を偏見で見なくなった(考えが違って当たり前、と思える)ことです。帰国後は陸奥新報の取材を受け、新聞記事にしていただきました。

また、留学の際に大学院を1年休学しましたが、協定校への学費免除や、奨学生制度で無利子・返済不要の奨学金をいただけたことは非常によかったです。

 

-学生時代に現在の仕事に繋がるような活動をしましたか。また、特に首都圏での就職を希望する場合、学生時代にやっておいた方が良いことはありますか。

私は、都内に本社がある企業に絞って就職活動をしていました。理由として、都内には非常に多種多様な企業があり、その中で仕事をして生活を送ることで、業種や職種を超えた人たちと関わることができると考えていたからです。

いくつか内定をもらった中で、ワンマン経営でないこと・商社であること、の2点を考慮して就職先を決めました。その当時は、現職につながるとは一切考えておりませんでしたが、結果的に自分の判断は間違っていなかったという自負があります。

また、学生時代には、自分自身の見聞やコミュニティを広げるためにも、今まで属したことがないような団体に飛び込んで、様々な人たちと交流をしていくべきだと思います。サークルやバイトでも、自分が興味のないこと・苦手なことにもチャレンジすることで、新しい発見や気づきが生まれ、自分の適性(何が性に合って、自分がどういう人なのか)を見出すことができるからです。

私は、したいこと・楽しみたいことを主眼に置いて、飛び込んでいきます。以前、仕事の関係で引っ越しをしたばかりの時は、知り合いもいませんでしたが、ネットやSNSで趣味のフットサルのグループを見つけ、仲間に入れてもらいました。やりたいことの延長線上にあることなら、長続きします。

「学部卒より大学院を修了していた方が有利か」という点については、必ずしも院卒が有利とは思いません。例えば自分の場合だと、大学院と留学を合わせると、学部卒の人より3年遅れて社会に出ることになります。営業職のような文系では、ストレートに4年で大学を卒業した人を採りたい、と言われることが多いです。一方、研究職を目指すなら、院卒が良いでしょう。大学院を修了しておくと、専門的な単位や用語に対するアレルギーがありません。

 

冬の弘前大学外国人教師館(2014年2月)

 

 

弘前に根付いた人たちと接することで身に付いたグローバル視点

 

-首都圏での就職に関する情報の入手や、インターンシップの活用は、どのようにしたらよいでしょうか。

私の場合、首都圏で生活をしている先輩などの伝手が全くなかったため、インターネット(当時は「みんなの就活」等)のみで情報を得ていましたが、説明会やインターンシップは積極的に参加するように心掛けていました。「1日インターン」に数社、「1週間のインターン」に1社行きました。

特にどういう業界が自分に合っているのかわかっておらず、かつそこまでの信念(この業界で絶対働きたいという思い)がなかったので、「この企業ではどのような人が働いているのか」「自分がそこで働きたいと思える人に出会えるかどうか」ということを重きにおいて説明会等に臨んでいました。説明会やインターンシップは実際に働いている人と話をすることができるいい機会ですし、その企業の人たちと一緒に働きたいと思えない会社では、将来的に入社しても後悔する可能性が高いと考えています。

 

-弘前大学のような地方大学生が、首都圏での就職活動でアピールすべき点は?

地方国立大出身学生、ということは就職活動において非常にアピールポイントになると思います。特に青森の田舎(と言ったら失礼ですが…)では、地域に根付いた人たちが多く生活をしており、その人たちと普段から接することで、その人たちの思考や嗜好を肌で感じ取ることができると考えます。

企業のグローバル化が叫ばれていますが、グローバル化はあくまでも、それぞれの地方の集合体だと思います。その地域でしか経験できない文化や伝統を体験し、地元の人たち(=弘前出身の同級生等)と接することで得られる経験値は、将来的に大きな視点(グローバル視点)で見た際に、自分の中での大きな財産につながると考えています。

 

-首都圏での就職活動で苦労した点は何ですか。

やはり往復の交通費・交通時間が非常にかかったことです。最近はオンラインなどが増えているかと思いますが、当時はオンラインでの面接等はほとんどなく、スケジュールを調整することも非常に大変でした。

 

 

首都圏で充実した生活を送れたことが自信に

 

-首都圏での生活について、負担や問題点はありますか。

家賃補助などの費用がある企業は除いて、家賃の比重が都内だと非常に高かったことです。若手のうちは給料の大半が家賃で消えてしまうかと思います。また、私は問題なかったですが、首都圏で知り合いがいない状態で上京した場合、職場での人間関係等で悩むことになると、頼れる人がいなくなるため、心のケアや精神衛生面では自分ひとりで解決しなければいけない可能性のあることが問題になると思います。

私の場合は、大学時代の友人の共通の知人が東京にいたこともラッキーでした。趣味のフットサルを通じて、仲間を増やしていくことができました。このように、積極的に新しいコミュニティや自分の興味のある社会人サークルなどに参加できるのであれば、問題はないかと思いますが…。

 

-首都圏に就職して、良かったことは?

「首都圏では何でもある」ということを、身をもって経験できました。モノにしろコトにしろ、首都圏はまさに人種のるつぼで、多種多様な人間もいますし、非常に多くの娯楽や誘惑にあふれています。そこが首都圏のいいところでもあり、また時には悪いところだと感じたこともありました。

自分と性格的に合わない人とぶつかったり、自分の常識では考えられない経験もしたりしましたが、その中で自分の居場所を見つけ、プレゼンスを発揮しながら充実した生活を送れたことは、将来的には自分はどこでも生活がしていける、という自信につながり、非常に良かったと思っています。

 

 

在学生の皆さんへ

 

弘前大学や弘前という街が、いかに小さなコミュニティで成り立っているか、首都圏で生活をしていると強く肌で感じるようになると思います。それは欠点だと思うかもしれませんが、時には非常に大きな武器にも転じ得ます。無駄かと思えるどんな小さなことも、結果的には将来の自分の糧になるのは間違いないので、是非とも弘前での生活を楽しんで、弘前のいいところを見つけられるように学生生活を過ごしてください。

 

(2020年10月取材)

 

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